ころが、奥さん。その真白草花と云ふのが、案外にも青木|弟《ジュニヨル》だつたりするのぢやありませんか。」
小山と呼ばれた外交官らしい紳士が、突込んだ。
「まあ! 執念深い! 発車するまでに、青木さんが、お見えになつたら、その償《つぐなひ》として、皆さんを箱根へ御招待しますわ。御覧なさい、もう切符を切りかけたのに、青木さんはお見えにならないぢやありませんか。」
夫人はさう言ひながら、美奈子達を促して改札口の方へ進んだ。若い紳士達は、蟻の甘きに従くやうに、夫人の後から、ゾロ/\と続いた。
夫人が、汽車に乗つた後も、青木と呼ばれる青年は姿を現さなかつた。若い男達は、やつと夫人の言葉を信じ初めた。
「向うから、お呼び寄せになるか何《ど》うかは別として、今日同行なさらないこと丈《だけ》は、信じましたよ。はゝゝゝゝ。」
小山と云ふ男が、発車間際になつて、さう言つた。
「まだそんな負惜しみを、言つていらつしやるの!」
夫人は、さう言ひながら、嫣然《につこり》と笑つて見せた。
美奈子は、何が何だつたか、判らなくなつた。母の自動車の中の言葉では、青木と云ふ青年が――墓地で逢つた彼の人に相違な
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