う思ふと美奈子は、失望したやうな、何となく物足りないやうな心持になつた。
自動車が、日比谷公園の傍のお濠端を走つてゐる時だつた。美奈子は、やつと思ひ切つて母に訊いて見た。
「あの、学生の方とかをお連れするのぢやなかつたの?」
瑠璃子は、初めて気が付いたやうに云つた。
「さう/\。あの方を美奈さんに紹介して置くのだつたわ。貴女《あなた》まだ御存じないのでせう。」
「はい! 存じませんわ。」
「学習院の方よ。時々制服を着ていらつしやることがあつてよ。気が付かない!」
「いゝえ! 一度もお目にかゝつたことありませんわ。」
「青木さんと云ふ方よ。」
母は何気ないやうに云つた。
「青木さん!」美奈子は一寸|駭《おどろ》いたやうに云つた。「その方は此間、亡くなられたのではございませんの。」
美奈子も、母の男性のお友達の一人なる青木|某《なにがし》が、横死したと云ふことは、薄々知つてゐた。
「いゝえ! あの方の弟さんよ。兄《おあにい》さんは、帝大の文科にいらしつたのよ。」
茲《こゝ》まで聴いたとき美奈子にはもう凡てが、判つてゐた。此の旅行の同伴者が、何人《なんぴと》であるかがもうハツキリと
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