妾《わたし》今年は箱根へ行かうかしらと思つてゐるの、今年は電車が強羅まで開通したさうだし、便利でいゝわ。」
「妾《わたし》箱根へはまだ行つたことがありませんの。」
「それだと尚いゝわ。妾《わたし》温泉では箱根が一番いゝと思ふの。東京には近いし景色はいゝし。ぢややつぱり箱根にしませうね。明日でも、富士屋ホテルへ電話をかけて部屋の都合を訊き合せませうね。」
さう云つて、瑠璃子は言葉を切つたが、直ぐ何か思ひ出したやうに、
「さう/\、まだ貴女《あなた》にお許しを願はなければならぬことがあるの。女手ばかりだと何かに付けて心細いから、男のお友達の方に、一人一緒に行つていたゞかうと思ふの。貴女、介意《かま》はなくつて?」
「介意ひませんとも。」美奈子はさう答へた。もし、昨日の美奈子であつたら、それをもつと自由に快活に答へることが出来たであらう。が、今の美奈子はさう答へると共に、胸が怪しく擾れるのを、何《ど》うともすることが出来なかつた。
「温和《おとな》しい学生の方なの。いろ/\な用事をして貰ふのにいゝわ。」
瑠璃子は、いかにもその学生を子供扱ひにでもしてゐるやうな口調で云つた。
学生と聴く
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