、彼女の慎しい処女性が、彼女自身にそれを許さなかつた。彼女は、自身でも兄妹のことを考へてゐるやうに、言訳しながら、本当に兄|丈《だけ》のことを考へてゐたのかも知れなかつた。
 美奈子は、兄の方の美しい凜々しい姿を、心の裡で、ぢつと噛みしめるやうに、想ひ出してゐるとほの/″\と夜の明けるやうに、心の裡に新しい望《のぞみ》や、新しい世界が開けて行くやうに思つた。今まで夢にも知らなかつたやうな、美しい世界が開けて行くやうに思つた。
 が、それと一緒に、兄妹の名前が、ハツキリと知れないことが、寂しかつた。あの時に、偶然逢つたばかりで、今後永く/\、否一生逢はずに終るのではないかと思つたりすると、淡い掴みどころのないやうな寂しさが、彼女の心を暗くしてしまふのだつた。
 彼女は、新しい望みと、寂しさとを一緒に知つたと云つてもよかつた。否彼女の心の少女らしい平和は、永久に破られたと云つてもよかつた。
 美奈子は、以前よりも温和《おとな》しい、以前よりも慎しい少女になつてゐた。
 その裡に、彼女の心にも、少女らしい計画《プラン》が考へられてゐた。さうだ! 此の次の日曜にも、お墓詣りをして見よう。もし、
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