を自分の思ひ通《どほり》にしようとするものは、利己主義ではない、他人の生活をまで、自分の思ひ通《どほり》にしようとするものこそ、本当の利己主義だと、ある人が申しましたが、貴君などこそ、本当の利己主義でいらつしやいますわね。青木さんの弟が妾《わたくし》を慕つていらつしやるとする。さう仮定したとしても、それがあの方としては、一番本当の生活ぢやございませんでせうかしら。それが、あの方として一番本当の生き方ぢやございませんかしら。さう云ふ他人の真剣な生活を、貴君が傍《はた》から心配なさることは少しもないと思ひますわ。妾《わたくし》のために、あの方が、一身を犠牲にするやうな事があつたとしても、あの方としては一番本当の生き方をしたと云ふ事になりは致しませんでせうか。」
夫人の考へ方は、凡ての妥協と慣習とを踏み躙つてゐた。
「果してそんなものでせうか。僕は断じてさうは思ひません。」
信一郎は可なり激しく、抗議せずにはゐられなかつた。
「それは、銘々の考へ方の違《ちがひ》ですわ。妾《わたくし》は、妾《わたくし》の考へ方に依つて生きる自由を持つてゐます。」
夫人は、この長い激論を打ち切るやうに云つ
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