を賭して、貴女の思ひ通り、生活なさることを、他からかれこれ云ふことの愚さに気が付きました。が、奥さん、僕は、今お暇する前に、たつた一つ丈お願ひがあるのです。聴いて下さるでせうか。」
「どんなお願ひでございませうか。妾《わたくし》にも出来ることでございましたら。」
信一郎が夫人の本心を知つてから、可なり妥協的な心持になつてゐるのにも拘はらず、夫人の態度の険しさは、少しも緩んでゐなかつた。
「外でもありません。先刻も申しました通り、青木君の弟|丈《だけ》を、貴女の目指す男性から除外していたゞきたいと思ふのです。青木君の死をまざ/\と知つてゐる丈《だけ》、あの方の弟までが、貴女の客間《サロン》に出入することは、僕の心を暗くするのです。青木君の死の責任が孰《どち》らにありませうとも、青木君が貴女《あなた》を恨んで死んだ以上、青木君の弟に対して丈《だけ》は、慎んでいたゞきたいと思ふのです。」
「貴君《あなた》は、御忠告をなさらないと云ふ口の下から、またさう云ふことを仰しやつていらつしやるのですね。」さう云ひながら、遉《さすが》に夫人は一寸苦笑ともなく微笑ともなく笑つた。「自分の生活|丈《だけ》
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