を妾《わたくし》が受けると思つていらつしやるのですか。時計こそ、お受けしましたが、そんな御遺言なんか、一言半句だつて、お受けする覚えはありません。そんなお言伝を、青木さんから承はるやうな覚えは、さら/\ありません。今承はつたお言葉全部を、そのまゝ御返上します。」
夫人の声にも、憎みと怒りとが、燃えてゐた。が、信一郎はたぢろがなかつた。
「死人に口がないと思つて、そんなことを仰しやつては困ります。貴女を、今日訪問した客に村上と云ふ海軍大尉があつた筈です。まさか、ないとは仰しやいますまいね。」
「よく御存じですね。」
夫人は、平然として答へた。
「それなら、青木君の遺言を受ける責任と義務とがあります。貴女に、もし少しでも良心が残つていらつしやるのなら、今貴君にお目にかけるものを、平然と読めるかどうか試して御覧なさい!」
さう云ひながら、信一郎はポケットに曲げて入れてゐたノートを夫人の眼前に突き付けた。
三
信一郎が、眼の前に突き付けたノートを、夫人は事もなげに受取つた。ノートの重さにも堪へないやうな華奢な手で、それを無造作に受け取つた。
鋼鉄の如き心と云ふのは
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