する。恋をしてゐるやうな姿勢|丈《だけ》を取る。妾《わたくし》は、妾《わたくし》の周囲に蒐まつてゐる、さうした戯恋者のお相手をすることには、本当に倦き/\しましたのよ。妾《わたくし》は真剣な方が、欲しいのよ。男らしく真剣に振舞ふ方が欲しいのよ。凡ての動作を手先丈でなく心の底から、行ふ方《かた》が欲しいのよ。
貴君《あなた》が忿然として座を立たれたとき、妾《わたくし》が止めるのも、肯かず、憤然として、お帰り遊ばす後姿《うしろすがた》を見たとき、この方《かた》こそ、何事をも真剣になさる方《かた》だと思ひましたの! 何事をなさるにも手先や口先でなく、心をも身をも、打ち込む方だと思ひましたの。妾《わたくし》が長い間、探《たづ》ねあぐんでゐた本当の男性だと思ひましたの。
信一郎様!
貴方《あなた》は妾《わたくし》の試《テスト》に、立派に及第遊ばしたのよ。
今度は、妾《わたくし》が試される番ですわ、妾《わたくし》は進んで貴方《あなた》に試されたいと思ひますの。妾《わたくし》が、貴方《あなた》のために、どんなことをしたか、どんなことをするか、それをお試しになるために、直ぐ此の自動車でいらしつて下さい
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