郎の意外な雄弁に、半可な文学通に過ぎない小山男爵は、もうとつくに圧倒されたと見え、その白い頬を、心持赤くしながら、不快さうに黙つてしまつた。
 三宅は、云ひ込められた口惜しさを、何うかして晴さうと、駁論の筋道を考へてゐるらしく口の辺りをモグ/\させてゐた。
「渥美さんは、本当に立派な文芸批評家でいらつしやる。妾《わたくし》全く感心してしまひましたわ。」
 瑠璃子夫人は、心から感心したやうに、賞讃の微笑を信一郎に注いだ。
 信一郎は、女王の御前仕合で、見事な勝利を獲た騎士のやうに、晴れがましい揚々たる気持になつてゐた。
「然し……」と、三宅と云ふ青年が、必死になつて駁論を初めようとした時だつた。
 廊下に面した扉《ドア》を、外からコツ/\と叩く音がした。

        六

「誰方《どなた》!」
 夫人は、扉《ドア》を叩く音に応じてさう云つた。
「僕です。」
 外の人は明晰な、美しい声でさう答へた。
「あら、秋山さんなの。丁度よいところへ。」
 夫人は、さう云ひながら、いそ/\と椅子を離れた。信一郎が、入つて来たときは、夫人はたゞ椅子から、腰を浮かした丈《だけ》だつたのに。
 夫人が
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