も醒めるやうな白い棒縞のお召が、夫人の若々しさを一層引立てゝゐた。白地の仏蘭西《フランス》縮緬の丸帯に、施された薔薇の刺繍は、匂入りと見え、人の心を魅するやうな芳香が、夫人の身辺を包んでゐる。
信一郎の失望も憤怒も、夫人の鮮《あざやか》な姿を見てゐると、何時の間にか撫でられるやうに、和《なご》んで来るのだつた。
四
「渥美さん! 今大変な議論が始まつてゐるのでございますよ。明治時代第一の文豪は、誰だらうと云ふ問題なのでございますよ。貴君の御説も伺はして下さいませな。」
夫人は、信一郎を会話の圏内に入れるやうに、取り做して呉れた。が、初めて顔を合はす未知の人々を相手にして、直ぐおいそれ! と文学談などをやる気にはなれなかつた。その上に、夫人から、帝劇のボックスで聴いた「こんなに打ち解けた話をするのは、貴君《あなた》が初めてなのよ。」と、云ふやうな、今となつては白々しい嘘が、彼の心を抉るやうに思ひ出された。
「だつて奥さん! 独歩には、いゝ芽があるかも知れません。が、然しあの人は先駆者だと思ふのです。本当に完成した作家ではないと思ふのです。」
信一郎が、何も云ひ出
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