の次ぎの日曜まで、彼は絶えず、美しい夫人の記憶に悩まされた。食事などをしながらも、彼の想像は美しい夫人を頭の中に描いてゐることが多かつた。
「あら、何をそんなにぼんやりしていらつしやいますの、今度の日曜は何日? と云つてお尋ねしてゐるのに、たゞ『うむ! うむ!』云つていらつしやるのですもの。何をそんなに考へていらつしやるの?」
 静子は、夫がボンヤリしてゐるのが、可笑しいと云ひながら、給仕をする手を止めて、笑ひこけたりした。夫が、他の女性のことを考へて、ボンヤリしてゐるのを、可笑しいと云つて無邪気に笑ひこける妻のいぢらしさが、分らない信一郎ではなかつたが、それでも彼は刻々に頭の中に、浮んで来る美しい面影を拭ひ去ることが出来なかつた。
 到頭夫人と約束した次ぎの日曜日が来た。その間の一週間は、信一郎に取つては、一月も二月もに相当した。彼は、自分がその日曜を待ちあぐんでゐるやうに、夫人がやつぱりその日曜を待ち望んでゐて呉れることを信じて疑はなかつた。
 夫人が、自分を唯一人の真実の友達として、選んで呉れる。夫人と自分との交情が発展して行く有様が、いろ/\に頭の中に描かれた。異性の間の友情は
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