だつた。而も、それと同時に、彼女の美しい横顔《プロフィイル》は、本当に音楽が解るものゝ感ずる恍惚たる喜悦で輝いてゐるのだつた。其処には日本の普通の女性には見られないやうな、精神的な美しさがあつた。思想的にも、感覚的にも、開発された本当に新しい女性にしか、許されてゐないやうな、神々しい美しさがあつた。
 信一郎は、時々彼女の横顔を、そのくつきり[#「くつきり」に傍点]と通つた襟足を、そつと見詰めずにはゐられないほど、彼女独特の美しさに、心を惹かされずにはゐられなかつた。
 曲が、終りかけると、彼女は何人《なんぴと》よりも、先に慎しい拍手を送つた。
 快い緊張から夢のやうに醒めながら、彼女は信一郎を顧みた。
「妹の方が、技巧は確《たしか》ですけれども、どうも兄の方が、奔放で、自由で、それ丈《だけ》天才的だと思ひますのよ。」
「僕も同感です。」信一郎も、心からさう答へた。
「貴君《あなた》、音楽お好き? ほゝゝゝ、わざ/\来て下さつたのですもの、お好きに定《きま》つてゐますわね。」
 彼女は、二度目に会つたばかりの信一郎に、少しの気兼もないやうに、話した。
「好きです。高等学校にゐたときは、
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