云ふのは本当ですか。」
医師は、横はつてゐる勝平の傍《そば》近く、膝行《ゐざ》り寄りながら、瑠璃子にさう訊いた。
瑠璃子は、遉《さすが》に落着きを失はなかつた。
「いゝえ! 女中が狼狽《うろた》へて、そんなことを申したのでございませう。強盗などとは嘘でございます。お恥かしいことでございますが、つい息子と……」
さう云つたものの、後は続け得なかつた。医師は直ぐその場の事情を呑み込んだやうに、勝平の身体に手をやつて、一通《ひととほり》検《あらた》めた。
「何処もお負傷《けが》はないのですね。」
「はい! 負傷《けが》はないやうでございます。」瑠璃子は静かに答へた。
「御心配はありません。何処か打ち所が悪くつて気絶をなさつたのです。」
医師は事もなげにさう云ひながら、その夜目にも白い手を脈に触れた。五秒十秒、医師はぢつと耳を傾けてゐた。それと同時に、彼の眸に、勝平の蒼ざめて行く顔色が映つたのだらう。彼は、急に狼狽したやうに前言を打ち消した。
「あゝこりやいけない!」
さう云ひながら、彼は手早く聴診器を、鞄の中から、引きずり出しながら、勝平の肥り切つた胸の中の心臓を、探るやうに、幾度
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