ながら、モジ/\してゐた。もし勝彦が、聡明な青年であつたならば、簡単に率直に、しかも貴夫人を救つた騎士《ナイト》のやうに勇ましく、
『貴女を救ふために。』と答へ得たのであるが。
六
瑠璃子から、何と訊かれても、勝彦は何とも返事はしないで、たゞニタリ/\と笑ひ続けてゐる丈だつた。
老人の喜太郎は、張り詰めてゐた勇気が、急に抜け出してしまつたやうに云つた。
「仕様のない若旦那だ。こんな晩に東京から、飛び出して来て、旦那をとつちめるなんて、理窟のねえ事をするのだから、始末に了へねえや。奥様! こんな人に介意《かま》つてゐるよりか旦那の容体が大事だ!」
喜太郎は、勝彦を噛んで捨てるやうに非難しながら、座敷の真中に、生死も判らず横はり続けてゐる勝平の方へ行つた。
が、瑠璃子は喜太郎のやうに心から勝彦を、非難する気には、なれなかつた。口では勝彦を咎めるやうなことを云ひながら、心の中では此の勇敢な救ひ主に、一味《いちみ》温かい感謝の心を持たずにはゐられなかつた。
丁度、その時に、勝平のうめき声が、急に高くなつた。瑠璃子は思はず、その方に引き付けられた。
彼の顔面の筋肉
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