郎は、意外なる発見に、狂つたやうに叫び続けた。瑠璃子も思はず、瀕死の勝平の傍を離れると、二人が突つ立ちながら、相対してゐる方へ近づいた。
 いかにも、その男は勝彦だつた。何時も見馴れてゐる大島の不断着が、雨でヅブ濡れに濡れてゐる。髪の毛も、雨を浴びて黒く凄く光つてゐる。日頃は、無気味《グロテスク》な顔ではあるが、何となく温和であるのが、今宵は殺気を帯びてゐる。それでも、瑠璃子の顔を見ると、少し顔を赤めながら、ニタリと笑つた。
 暫らくの間は、瑠璃子も言葉が出なかつた。が、凡ては明かだつた。東京の家に監禁せられてゐた彼は、瑠璃子を慕ふの余り、監禁を破つて、東京から葉山まで、風雨を衝いて、やつて来たのに違ひなかつた。
「お父様をあんなにしたのは、貴君《あなた》でしたか。」
 瑠璃子は、可なり厳粛な態度でさう訊いた。
 勝彦は、黙つて肯いた。
「東京から、一人で来たのですか。」
 勝彦は黙つて肯いた。
「汽車に乗つたのですか。」
 勝彦は、又黙つて肯いた。
「お父様を、何うしてあんなにしたのです。何《ど》うしてあんなにしたのです。」
 瑠璃子に、さう問ひ詰められると、勝彦は顔を赤《あから》め
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