かたき》の勝平からさうした恩恵を受けたことを、死ぬほど恥しがつて、学業を捨ててしまつて、遠縁の親戚が経営してゐるボルネオの護謨《ゴム》園に走らうとしてゐる。瑠璃子は、そんな噂を、耳にはさんでゐる。が、あの多血性な恋人は、さうした逃避的な態度を、捨てゝ、その恋の敵《かたき》を倒すために、再び風雨の夜に乗じて迫つたのであらうか。否、自分に訣別するため、外《よそ》ながら自分を見ようとした時、偶然自分が危難に遭遇したため、前後の思慮もなく飛び込んだのではないだらうか。
強盗! 泥棒! 強盗や泥棒が、あゝした襲撃を為すだらうか。もし、あれが直也だつたら、縦令《たとひ》、勝平を倒したにしろ、彼の一生はムザ/\と埋れてしまふのだ。尤も、今でも自分のために、半分埋れかけてゐるのだが。
さう思ふと、瑠璃子は老爺《ぢいや》を呼ぶ声も出なくなつてしまつて、再び其処へ立ち竦《すく》んだ。
が、瑠璃子の声に騒ぎ立つた女中は、声を振り搾つて老爺《ぢいや》を呼んだ。
四
叫び立てる女中達の声に、別荘番の老爺《ぢいや》は驚いて馳け付けて来た。強盗だと聴くと、いきなり取つて返して、古い猟銃用
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