ら、相対してゐた。
空に風と雨とが、戦つてゐるやうに、地に彼等は戦つてゐるのだつた。瑠璃子は戦ふべき力もなかつた。武器も持つてはゐなかつた。たゞ彼女の態度に備る天性の美しい威厳一つが、勝平の獣的な攻撃を躊躇させてゐた。が、その躊躇も、永く続く筈はなかつた。勝平の眼が、段々狂暴な色を帯びると共に、彼は勢《いきほひ》猛《まう》に瑠璃子に迫つて来た。彼女は、相手の激しい勢に圧されるやうにヂリ/\と後退《あとずさ》りをせずにはゐられなかつた。
勝平の今少し前の懺悔や告白が、かうした態度に出るまでの径路であつた――一旦|下手《したて》から説いて見て、それで行かなければ腕力に訴へる――かと思ふと、勝平に対して、懐いてゐた一時の好感は、煙のやうになくなつて、たゞ苦い苦い憎悪の滓|丈《だけ》が、残つてゐた。指一つ触れさせてなるものか、さうした堅い決意が、彼女の繊細な心臓を、鉄のやうに堅くしてゐた。
が、彼女の精神的な強さも、勝平の肉体の上の優越に打ち勝つことが出来なかつた。何時の間にか追ひ詰められたやうに、部屋の一方に、海に面した硝子《ガラス》戸の方へ、逃るゝ道のない硝子《ガラス》戸の方へ、瑠璃
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