《わし》を人間として扱つて下さらないなら、俺《わし》は獣として、貴女に向つて行くのぢや。俺《わし》は獣のやうに、貴女に迫つて行くのぢや。」
 勝平の眸は燃ゆるやうに輝やいた。
「さうだ! 俺《わし》は獣として貴女に迫つて行く外はない!」
 さう云つたかと思ふと、勝平は羆《ひぐま》が人間を襲ふ時のやうに、のツと立ち上つた。
 瑠璃子も弾かれたやうに、立ち上つた。
 立ち上つた勝平は、フラ/\と蹌《よろ》めいてやつと踏み堪へた。彼はその凄じい眸を、真中に据ゑながら、瑠璃子の方へヂリ/\と迫つて来た。
 かよわい瑠璃子の顔は、真蒼だつた。身体《からだ》はかすかに顫へてゐたけれども、怯《わる》びれた所は少しもなかつた。その美しい眉宇は、きつと、緊きしまつて、許すまじき色が、アリ/\と動いた。
 丁度、その時だつた。風に煽られた大雨が一頻り沛然として降り注いで来た。

        二

 荒るゝまゝに、夜は十二時に近かつた。
 台所にゐる筈の女中達は、眠りこけてでもゐるのだらう、話声一つ聞えて来なかつた。ただ吹き暴《あ》るゝ大風雨の裡に勝平と瑠璃子と丈《だけ》が、取り残されたやうに、睨みなが
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