すか。」
勝平は、さう云つて言葉を切つた。酔つてはゐたが、その顔には、一本気な真面目さが、アリ/\と動いてゐた。かうした心の告白をするために、故意《わざ》と酒盃《さかづき》を重ねてゐるやうにさへ、瑠璃子に思はれた。
「俺《わし》は、世の中に金より貴いものはないと思つてゐました。俺《わし》は金さへあれば、どんな事でも出来ると思つてゐました。実際貴女を妻にすることが、出来た時でさへ、金があればこそ、貴女のやうな美しい名門の子女を、自分の思ひ通《どほり》にすることが出来るのだと思つてゐたのです。が、俺《わし》が貴女を、金で買ふことが出来たと想つたのは、俺《わし》の考違《かんがへちがひ》でした。金で俺《わし》の買ひ得たのは、たゞ妻と云ふ名前|丈《だけ》です。貴女の身体をさへ、まだ自分の物に、することが出来ないで苦しんでゐるのです。まして、貴女の愛情の断片でも、俺《わし》の自由にはなつてゐないのです。俺《わし》は貴女の俺《わし》に対する態度を見て、つくづく悟つたのです。俺《わし》の全財産を投げ出しても、貴女の心の断片《きれはし》をも、買ふことが出来ないと云ふことを、つく/″\悟つたのです。が、
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