さう思ひながらも、俺《わし》は貴女を思ひ切ることが出来ないのです。俺《わし》は金で買ひ損つたものを、俺《わし》の真心で、買はうと思ひ立つたのです。いや、買ふのではない、貴女の前に跪《ひざまづ》いて、買ふことの出来なかつたものを哀願しようとさへ思つてゐるのです。また、さうせずにはゐられないのです。先刻《さつき》も申しました通《とほり》、もう一刻も貴女なしには生きられなくなつたのです。」
 変に言葉までが改まつた勝平は、恋人の前に跪いてゐる若い青年か、何かのやうに、激してゐた。彼の巨きい真赤な顔は、何処にも偽りの影がないやうに、真面目に緊張してゐた。彼は大きい眼を刮《む》きながら、瑠璃子の顔を、ぢつと見詰めてゐた。敵意のある凝視なら、睨み返し得る瑠璃子であつたが、さうした火のやうな熱心の凝視には却つて堪へかねたのであらう、彼女は、眩しいものを避けるやうに、ぢつと顔を俯けた。
「何うです! 瑠璃子さん! 俺の心を、少しは了解して下さいますか。」
 勝平の声は、瑠璃子の心臓を衝《つ》くやうな力が籠つてゐた。

        七

 酒の力を借りながら、その本心を告白してゐるらしい勝平の言葉を
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