友人にね、此の暴風雨《あらし》ぢや道が大変だから、鎌倉で宿まつて行かないかと、云はれたけれどもね。やつぱり此方《こつち》が心配でね。是非葉山へ行くと云つたら、冷かされたよ。美しい若い細君を貰ふと、それだから困るのだと、はゝゝゝゝゝ。」
凄じい風の音、烈しい雨の音を、聞き流しながら、勝平は愉快に哄笑した。自然の脅威を挑ね返してゐるやうな勝平の態度に接すると、瑠璃子は心強く頼もしく思はずにはゐられなかつた。男性の強さが、今始めて感ぜられるやうに思つた。
「妾《わたくし》何《ど》うしようかと思ひましたの。廂がベリベリと吹き飛ばされるのですもの。」
瑠璃子は、まだ不安さうな眼付をしてゐた。
「なに、心配することはない。十月一日の暴風雨の時だつて、土堤《どて》が少しばかり、崩された丈《だけ》なのだ。あんな大暴風雨が、二度も三度も続けて吹くものぢやない。」
勝平は、瑠璃子が後から、着せかけた褞袍《どてら》に、くるまりながら、どつかりと腰を降ろした。
が、勝平のさうした言葉を、裏切るやうに、風は刻々吹き募つて行つた。可なり、ピツタリと閉されてゐる雨戸迄が、今にも吹き外されさうに、バタ/\と鳴
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