三方から人間の作つた自然の邪魔物を打ち砕かうとでもするやうに力を協《あは》せて、此建物を強襲した。
グワラ/\と、何処かで物の砕け落ちる音がしたかと思ふと、それに続いて海に面してゐる廂が吹き飛ばされたと見え、ベリ/\と云ふ凄じい音が、家全体を震動した。今迄は、それでも、慎しく態度の落着を失つてゐなかつた瑠璃子もつい度を失つたやうに立ち上つた。
「何うしようかしら、今の裡に避難しなくてもいゝのかしら。」
さう云ふ彼女の顔には、恐怖の影がアリ/\と動いてゐた。人間同士の交渉では、烈女のやうに、強い彼女も、自然の恐ろしい現象に対しては、女らしく弱かつた。
女中達も、色を失つてゐた。女中は声を挙げて別荘番の老爺を呼んだけれども、風雨の音に遮られて、別荘番の家までは、届かないらしかつた。
ベリ/\と云ふ廂の飛ぶ音は、尚続いた。その度に、家がグラ/\と今にも吹き飛ばされさうに揺いだ。
丁度、此の時であつた。瑠璃子の心が、不安と恐怖のどん底に陥つて、藁にでも縋り付きたいやうに思つてゐる時だつた。悽じい風雨の音にも紛れない、勇ましい自動車の警笛《サイレン》が、暗い闇を衝いてかすかに/\聞えて
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