が、吹きちぎられるやうにメリ/\と音を立てた。

        四

「こんなに荒れると、本当に自動車はお危なうございますわ。一層こんな晩は、彼方《あちら》でお宿りになるとおよろしいのでございますが。」
 女中も主人の身を案ずるやうにさう云つた。が、瑠璃子は是非にも帰つて貰ひたいと思つた。何時もは、顔を見てゐる丈でも、ともすればムカ/\として来る勝平が、何となく頼もしく力強いやうに感ぜられるのであつた。
 日が、トツプリ暮れてしまつた頃から、嵐は益《ます/\》吹き募つた。海は頻りに轟々と吼え狂つた。波は岸を超え、常には干乾びた砂地を走つて、別荘の土堤《どて》の根元まで押し寄せた。
「潮が満ちて来ると、もつと波がひどく[#「ひどく」に傍点]なるかも知れねえぞ!」
 海の模様を見るために出てゐた、別荘番の老爺《おやぢ》は、漆のやうに暗い戸外から帰つて来ると、不安らしく呟いた。
「まさか、此間のやうな大|暴風雨《あらし》にはなりますまいね。」
 女中も、それに釣り込まれたやうに、オド/\しながら訊いた。皆の頭に、まだ一月にもならない十月一日の暴風雨の記憶がマザ/\と残つてゐた。それは、東京
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