はねばならなかつた。勝敗は、天に委せて、兎に角に、最後の必死的な戦ひを、戦はねばならなかつた。
さうした不安な期待に、心を擾されながらも、彼女はいろ/\と、別荘生活に必要な準備を整へた。彼女は、当座の着替や化粧道具などを、一杯に詰め込んだ大きなトランクの底深く、一口の短剣を入れることを忘れなかつた。それが、夫と二人|限《き》りの別荘生活に対する第一の準備だつた。
父の男爵が、瑠璃子の烈しい執拗な希望に、到頭動かされて、不承々々に結婚の承諾を与へて、最愛の娘を、憎み賤しんでゐた男に渡すとき、男爵は娘に最後の贈り物として、一口の短劒を手渡した。
「これは、お前のお母様が家へ来るときに持つて来た守り刀なのだ。昔の女は、常に懐刀《ふところがたな》を離さずに、それで自分の操を守つたものだ。貴女も普通の結婚をするのなら、こんなものは不用だが、今度のやうな結婚には、是非必要かも知れない。これで、貴女の現在の決心を、しつかりと守るやうになさい。」
父の言葉は簡単だつた。が、意味は深かつた。彼女はその匕首《あひくち》を身辺から離さないで、最後の最後の用意としてゐた。さうした最後の用意が、如何なる場
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