。黙つて聴いてゐた勝平の顔は、怒《いかり》と嫉妬のために、黒ずんで見えた。
余りに脆き
一
勝平は、冗談かそれとも真面目かは分らないが、人を馬鹿にしてゐるやうに、からかつてゐるやうに、勝彦を賞める瑠璃子の言葉を聞いてゐると、思はずカツとなつてしまつて、手に持つてゐる茶碗や箸を、彼女に擲《なげ》つけてやりたいやうな烈しい嫉妬と怒とを感じた。が、口先ではそんな厭がらせを云ひながらも、顔|丈《だけ》は此の頃の秋の空のやうに、澄み渡つた麗かな瑠璃子を見てゐると、不思議に手が竦んで、茶碗を投げ付けることは愚か、一指を触るゝことさへも、為し得なかつた。
が、勝平は心の中で思つた。此の儘にして置けば、瑠璃子と勝彦とは、日増に親しくなつて行くに違ひない。そして自分を苦しめるのに違ひない。少くとも、当分の間、自分と瑠璃子とが本当の夫婦となるまで、何うしても二人を引き離して置く必要がある。勝平は、咄嗟にさう考へた。
「あはゝゝゝゝ。」彼は突然取つて付けたやうに笑ひ出した。「まあいゝ! 貴女《あなた》がそんなに馬鹿が好きなら連れて行くもよからう。貴女のやうなのは、天邪鬼と云ふの
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