ないほど、不快なあさましい想像の種だつた。
「何をしてゐるのだ! こんな処で。こんなに遅く。」何時もは、馬鹿な息子に対し可なり寛大である父であつたが、今宵に限つては、彼は息子に対して可なり烈しい憎悪を感じたのである。
「何をしてゐたのだ! おい!」
 勝平は、鋭い眼で勝彦を睨みながら、その肩の所を、グイと小突いた。

        四

「茲《こゝ》に何をしてゐたのだ、茲に!」
 父が、必死になつて責め付けてゐるのにも拘らず、勝彦はたゞニヤリ/\と、たわいもなく笑ひ続けた。薄気味のわるいとりとめもなき子の笑ひが、丁度自分の恥しい行為を、嘲笑《あざわら》つてゐるかのやうに、勝平には思はれた。
 彼は、瑠璃子やまた、直ぐ次ぎの扉《ドア》の裡に眠つてゐる美奈子の夢を破らないやうにと、気を付けながらも、声がだんだん激しくなつて行くのを抑へることが出来なかつた。
「おい! こんなに遅く、茲《こゝ》に何をしてゐたのだ。おい!」
 さう云ひながら、勝平は再び子の肩を突いた。父にさう突き込まれると、白痴相当に、勝彦は顔を赤めて、口ごもりながら云つた。
「姉さんの所へ来たのだ。姉さんの所へ来たのだ。」
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