問の度毎に、瑠璃子の歓心を買ふために、高価な贈物を用意することを、忘れなかつた。
それが、ある時は金剛石《ダイヤ》入りの指輪だつた。ある時は、白金《プラチナ》の腕時計だつた。ある時は、真珠の頸飾だつた。瑠璃子は、さうした贈物を、子供が玩具を貰ふときのやうに、無邪気に何の感謝なしに受取つた。
が、父の容体を口実に、いつまでも、実家に止まることは、許されなかつた。それは、事情が許さないばかりでなく、彼女の自尊心が許さなかつた。敵を避けてゐることが、勝気な彼女に心苦しかつた。もつと、身体を危険に晒して勇ましく戦はなければならぬと思つた。形式的にでも、結婚した以上、形の上|丈《だけ》では飽くまでも、妻らしくしなければならないと思つた。敵の卑怯に報いるに卑怯を以てしてはならない。此方は、飽くまでも、正々堂々と戦つて勝たねばならない。さう思ひながら、彼女は勝平が迎ひの自動車に同乗した。
久しぶりに、瑠璃子と同乗した嬉しさに、勝平は訳もなく笑ひ崩れながら、
「あはゝゝゝゝ。そんなに、実家《おさと》を恋しがらなくてもいゝよ。親一人子一人のお父様に別れるのは淋しいだらう。が、何も心配することはない
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