してから、容体が急変してしまつたやうでございますの。妾かうしてはをられませんわ。ねえ! 一寸帰つて来ましてもようございませう。お願ひでございますわ。ねえ貴方!」
 瑠璃子は、涙に濡れた頬に、淋しい哀願の微笑を湛へた。
「あゝいゝとも、いゝとも。お父様の大事には代へられない。直ぐ自動車で行つて、しつかり介抱して上げるのだ。」
「さう言つて下さると、妾《わたくし》本当に嬉しうございますわ。」
 さう云ひながら、瑠璃子は勝平に近づいて、肥つた胸に、その美しい顔を埋めるやうな容子をした。勝平は、心の底から感激してしまつた。
「ゆつくりと行つておいで、向うへ行つたら、電話で容体を知らして呉れるのだよ。」
「直ぐお知らせしますわ。でも、此方から訊ねて下さると困りますのよ。父は、荘田へは決して知らせてはならない。大切な結婚の当夜だから、死んでも知らしてはならないと申してゐるさうでございますから。」
「うむよし/\。ぢや、よく介抱して上げるのだよ。出来る丈《だけ》の手当をして上げるのだよ。」
 自動車の用意は、直ぐ整つた。
「容体がよろしかつたら、今晩中に帰つて参りますわ。悪かつたら、明日になりまして
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