てゐる勝平を、嫣然と振り向きながら、瑠璃子は云つた。
「水に流すと云ふことがございますね。妾《わたくし》達は、此の証文を火で焼いたやうに、これまでのいろいろな感情の行き違ひを、火に焼いてしまはうと思ひますの……ほゝゝゝ、火に焼く! その方がよろしうございますわ。」
「あゝさう/\、火に焼く、さうだ、後へ何も残さないと云ふことだな。そりや結構だ。今までの事は、スツカリ無いものにして、お互に信頼し愛し合つて行く。貴女《あなた》が、その気でゐて呉れゝば、こんな嬉しいことはない。」
さう云ひながら、勝平は瑠璃子に最初の接吻をでも与へようとするやうに、その眸を異常に、輝かしながら、彼女の傍へ近よつて来た。
さう云ふ相手の気勢を見ると、瑠璃子は何気ないやうに、元の椅子に帰りながら、端然たる様子に帰つてしまつた。
その時に、扉《ドア》が開いた。
「彼方《あちら》の御用意が出来ましたから。」
女中は、淑《しと》やかにさう云つた。
絶体絶命の時が迫つて来たのだ。
「ぢや、瑠璃さん! 彼方《あちら》へ行きませう。古風に盃事《さかづきごと》をやるさうですから、はゝゝゝゝゝ。」
勝平が、卑しい肉に
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