、自分をしようとしたのだと思ふと、勝平に対する憎悪が又新しく心の中に蒸返された。

        六

 勝彦と美奈子とが、彼等自身の部屋へ去つた頃には、夜は十一時に近く、新郎新婦が新婚の床に入るべき時刻は、刻々に迫つてゐた。
 勝平は、先刻《さつき》から全力を尽くして、瑠璃子の歓心を買はうとしてゐた。彼は、急に思ひ出したやうに、
「おゝさう/\、貴女《あなた》に、結婚進物《マリエイジプレゼント》として、差し上げるものがありましたつけ。」
 さう云ひながら、彼は自分の背後に据ゑ付けてある小形の金庫から、一束の証書を取り出した。
「貴女のお父様に対する債権の証文は、みんな蒐めた筈です。さあ、これを今貴女に進上しますよ。」
 彼は、その十五万円に近い証書の金額に、何の執着もないやうに、無造作に、瑠璃子の前に押しやつた。
 瑠璃子は、その一束を、チラリと見たが、遉《さすが》にその白い頬に、興奮の色が動いた。彼女は、二三分の間、それを見るともなく見詰めてゐた。
「あのマッチは、ございますまいか。」彼女は、突如さう訊いた。
「マッチ?」勝平は、瑠璃子の突然な言葉を解し得なかつた。
「あのマッチ
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