から求めた華麗なフィヤット型の大自動車であつた。新郎新婦を、その幾久しき合衾《がふきん》の床に送るべき目出度き乗物だつた。
瑠璃子は、夫――それに違ひはなかつた――に招かるゝまゝ、相並んで腰を降した、が、その美しい唇は彫像のそれのやうに、堅く/\結ばれてゐた。
勝平は、何うにかして、瑠璃子と言葉を交へたかつた。彼は、瑠璃子の美しさがしみ/″\と、感ぜられゝば感ぜられる丈、たゞ黙つて、並んでゐることが、愈《いよ/\》苦痛になり出した。
彼は、瑠璃子の顔色を窺ひながら、オヅ/\口を開いた。
「大変沈んでをられるやうぢやが、さう心配せいでもようござんすよ。俺《わし》だつて貴女《あなた》が思つてゐるほど、無情な人間ぢやありません。貴女のお父様を、苛めて済まんと思つてゐるのです。罪滅ぼしに、出来る丈《だけ》のことはしようと思つてゐるのです。貴女も、俺を敵《かたき》のやうに思はんでな。これも縁ぢやからな。」
勝平は、誰に対しても、使つたことのないやうな、丁寧な訛のある言葉で、哀願するやうな口調でしみ/″\と話し出した。が、瑠璃子は、黙々として言葉を出さなかつた。二人の間に重苦しい沈黙が暫ら
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