迎へてゐた。
 彼は嘘から出た真《まこと》と云ふ言葉を心の裡で思ひ起してゐた。本当に、彼の結婚は嘘から出た真であつた。彼は、妙にこじれてしまつた意地から、相手を苦しめる為に、申込んだ結婚が、相手が思ひの外に、脆かつた為、手軽に実現したことが少しくすぐつたいやうにも思つた。それと同時に、名門のたつた一人の令嬢をさへ、自分の金の力で、到頭買ひ得たかと思ふと、心の底からむら/\と湧く得意の情を押へることが出来なかつた。
 が、結婚の式場に列るまで、彼は瑠璃子を高値で購つた装飾品のやうにしか思つてゐなかつた。五万円に近い大金を投じて、落藉《ひか》した愛妓に対するほどの感情をも持つてゐなかつた。『此のお嬢さん屹度むづがるに違ひない。なに、むづかつたつて、高の知れた子供だ。ふゝん。』と云つたやうな気持で神聖なるべき式場に列つた。
 が、雪のやうに白い白紋綸子の振袖の上に目を覚むるやうな唐織錦の裲襠《うちかけ》を被《き》た瑠璃子の姿を見ると、彼は生れて初めて感じたやうな気高さと美しさに、打たれてしまつて、神官が朗々と唱へ上げる祝詞《のりと》の言葉なども耳に入らぬほど、ぢつと瑠璃子の姿に、魅せられてゐ
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