自分の結婚に対して非難攻撃が高くなればなるほど、反抗的に公然《おほぴら》に華美に豪奢に、式を挙げようと決心してゐた。
 彼は、あらゆる手段で、朝野の名流を、その披露の式場に蒐めようとした。彼は、あらゆる縁故を辿つて、貴族顕官の列席を、頼み廻つた。
 九月二十九日の夕であつた。日比谷公園の樹の間に、薄紫のアーク燈が、ほのめき始めた頃から幾台も幾台もの自動車が、北から南から、西から東から、軽快な車台で夕暮の空気を切りながら、山下門の帝国ホテルを目指して集まつて来た。最新輸入の新しい型の自動車と交つては、昔ゆかしい定紋の付いた箱馬車に、栗毛の駿足を並べて、優雅に上品に、軋《きしら》せて来る堂上華族も見えた。遉《さすが》に広いホテルの玄関先も、後から後から蒐まつて来る馬車や自動車を、収め切れないではみ出された自動車や馬車は往来に沿うて一町ばかりも並んでゐた。
 祝宴が始まる前の控場の大広間には、余興の舞台が設けられてゐて、今しがた帝劇の嘉久子と浪子とが、二人道成寺を踊り始めたところだつた。

        二

 新郎の勝平は、控室の入口に、新婦の瑠璃子と並び立つて、次ぎ次ぎに到着する人々を
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