。或新聞紙は貴族院第一の硬骨を以て、称せらるゝ唐沢男爵に、さうした卑しい事のあるべき筈はないと、打消した。他の新聞紙は宛《あたか》も事件の真相を伝へる如くに云つた、曰く『荘田勝平は唐沢男に私淑してゐるのだ。彼は数十万円を投じて唐沢家の財政上の窮状を救つたのだ。唐沢男が、娘を与へたのは、その恩義に感じたからである。』と。他の新聞紙は、またこんな記事を載せた。結婚の動機は、唐沢瑠璃子の強い虚栄からである。彼女は学習院の女子部にゐた頃から、同窓の人々の眉を顰めさせるほど、虚栄心に富んだ女であつた、と。さうした記事に伴つて女子教育家や社会批評家の意見が紙面を賑はした。或者は、成金の金に委せての横暴が、世の良風美俗を破ると云つて憤慨した。或者は、米国の富豪の娘達が、欧洲の貴族と結婚して、富と爵位との交換を計るやうに、日本でも貧乏な華族と富豪が頻々として縁組を始めたことを指摘して、面白からぬ傾向である、華族の堕落であると結論した。
 が、さうした轟々たる世論を外に、荘田は結婚の準備をした、春の園遊会に、十万円を投じて惜しまなかつた彼は、晴の結婚式場には、黄金の花を敷くばかりの意気込であつた。彼は、
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