しさを、自分から捨ててしまふのです。凡ての女性らしさを、復讐を神に捧げてしまふのです。愛も恋も、慎しやかさも淑《しとやか》さも、その黒髪も白き肌《はだへ》も。
次ぎのことを申上げるのは、一番厭でございますが、荘田からの最初の申込みを取り継がれた方は、貴君のお父様です。従つて、求婚に対する妾《わたくし》の承諾も、順序として、貴君《あなた》のお父様に、取次いでいたゞかねばなりません。妾《わたくし》は、貴君に対する、この不快な恐ろしい手紙を書いた後に、貴君のお父様宛に、もう一つの、もつと不快な恐ろしい手紙を書かねばなりません。
それを思ふと、妾《わたくし》の心が暗くなります。が、妾《わたくし》はあくまで強くなるのです。あゝ、悪魔よ! もつと妾《わたくし》の心を荒ませてお呉れ! 妾《わたくし》の心から、最後の優しさと恥しさを奪つておくれ!
[#ここで字下げ終わり]
一句一句鋭い匕首《あひくち》の切先で、抉られるやうに、読み了つた直也は最後の一章に来ると、鉄槌で横ざまに殴り付けられたやうな、恐ろしい打撃を受けた。
最初は、縦令《たとひ》どんな理由があるにしろ、自分を捨てゝ、荘田に嫁がう
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