用して、善人を苦しめる悪魔を懲しめる手段は、これより外にはないのでございます。妾《わたくし》の行動を奇嬌だとお笑ひ下さいますな。芝居気があるとお笑ひ下さいますな。現代に於ては、万能力を持つてゐる金に対抗する道は、これより外にはないのでございます。……名ばかりの妻、さうです、妾《わたくし》はありとあらゆる手段と謀計とで以て、妾《わたくし》の貞操をあの悪魔のために汚《けが》されないやうに努力する積《つもり》です。北海道の牧場では、よく牡牛と羆《ひぐま》とが格闘するさうです。妾《わたくし》と荘田との戦ひもそれと同じです。牡牛が、羆の前足で、搏たれない裡に、その鉄のやうな角を、敵の脾腹へ突き通せば牡牛の勝利です、妾《わたくし》も、自分の操を汚されない裡に、立派にあの男を倒してやりたいと思ひます。
 妾《わたくし》の結婚は、愛の結婚でなくして、憎しみの結婚です。それに続く結婚生活は、絶えざる不断の格闘です。……
 が、どうか妾《わたくし》を信じて下さい。妾《わたくし》には自信があります。半年と経たない裡に精神的にあの男を殺してやる自信があります。
 直也様よ、妾《わたくし》のためにどうか、勝利を
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