のだ。俺の手提金庫に小切手帳が入つてゐるから持つて来るやうに。」と命じた。
良心を悪魔に、売り渡した木下と杉野子爵とは、自分達の良心の代価が、幾何《いくら》になるだらうかと銘々心の裡で、荘田の持つ筆の先に現れる数字を、貪慾に空想しながら、美奈子が小切手帳を持つて、入つて来るのを待つてゐた。
「十八の娘にしては、なか/\達筆だ! 文章も立派なものだ!」
荘田は、尚飽かず瑠璃子の手紙に、魂を擾されてゐた。
が、丁度その同じ瞬間に、瑠璃子の手紙に依つて、魂を擾されてゐたのは荘田勝平|丈《だけ》ではなかつた。
瑠璃子は、杉野子爵に宛てゝ、一通の手紙を書くのと同時に、その息子の杉野直也に対しても、一通の手紙を送つた。杉野子爵に対する手紙は、冷たい微笑と堅い鉄のやうな心とで書いた。直也に送つた手紙は、熱い涙と堅い鉄のやうな心とで書いた。
荘田勝平が、一方の手紙を読んで、有頂天になつたと同じに、直也は他の一方の手紙を読んで、奈落に突落されたやうに思つた。
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父を恐ろしい恥辱より救ひ、唐沢一家を滅亡より救ふ道は、これより外にはないのでございます。……
法律の力を悪
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