悪魔のやうな卑しい悪事を働いても、その形が法律に触れて居なければ、大手を振つて歩けるのだ。俺は切羽詰つて一寸逃れに、知人の品物を質入れした。世間に有り触れたことで、事情止むを得なかつたのだ。が、俺《わし》の行為の形は、ちやんと法律に触れてゐるのだ。法律が罰するものは、荘田の恐ろしい心ではなくして、俺《わし》の一寸した心得|違《ちがひ》の行為なのだ。行為の形なのだ!」
「若《も》し、法律がそんなに、本当の正義に依つて、動かないものでしたら、妾《わたくし》は法律に依らうとは思ひません。妾《わたくし》の力で荘田を罰してやります。妾《わたくし》の力で、荘田に思ひ知らせてやります。」
 気が狂つたのではないかと思ふほど、瑠璃子の言葉は烈しくなつた。父は呆気に取られたやうに、子の口もとを見詰めてゐた。
「金の力が、万能でないと云ふことをあの男に知らせてやらねばなりません。金の力で動かないものが、世の中に在ることを知らせてやらねばなりません。このまゝで、お父様が、有罪になるやうな事がございましたら、荘田は何と思ふか分りません。世の中には、法律の力以上に、本当の正義があることを、あの男に思ひ知らせてや
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