らねばなりません。金の力などは、本当の正義の前には土塊《つちくれ》にも等しいことを、あの男に思ひ知らせてやりたいと思ひます。」
さう云ひながら、瑠璃子は父の顔をぢつと見詰めてゐたが、思ひ切つたやうに云つた。
「お父様! お願ひでございます。瑠璃子を、無い者と諦めて、今後何を致しませうと、妾《わたくし》の勝手に委せて下さいませんか。」
瑠璃子の顔に、鉄のやうに堅い決心が閃いた。父は、瑠璃子の真意を測りかねて、茫然と愛児の顔を見詰めてゐた。
「お父様?[#「?」はママ] 妾《わたくし》は、ユーヂットにならうと思ふのでございます。」
七
「ユーヂット?」老いた父には、娘の云つた言葉の意味が分らなかつた。
「左様でございます。妾《わたくし》はユーヂットにならうと思ふのでございます。ユーヂットと申しますのは猶太《ユダヤ》の美しい娘の名でございます。」
「その娘にならうと云ふのは、どう云ふ意味なのだ!」父は、激しい興奮から覚めて、やゝ落着いた口調になつてゐた。
「ユーヂットにならうと申しますのは、妾《わたくし》の方から進んで、あの荘田勝平の妻にならうと云ふことでございます。
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