いゝえ! 妾《わたくし》は、さうは思ひません。」瑠璃子は、昂然として父の言葉を遮ぎつた。「荘田のやりましたやうな奸計を廻らしたならば、どんな人間をだつて、罪に陥すことは容易だと思ひます。お父様が信任していらつしやる木下をまで、買収してお父様を罠に陥し入れるなど、悪魔さへ恥ぢるやうな卑怯な事を致すのでございますもの。もし、国に本当の法律がございましたら、荘田こそ厳罰に処せらるべきものだと思ひます。荘田のやうな悪人の道具になるやうな法律を、妾《わたくし》は心から呪ひたいと思ひます。」
眦《まなじり》が、裂けると云つたらいゝのだらう。美しい顔に、凄じい殺気が迸つた。父も、子の烈しい気性に、気圧されたやうに、黙々として聴いてゐた。
「お父様、あんな男に起訴されて、泣寝入りになさるやうな、腑甲斐ないことをして下さいますな。飽くまでも戦つて、相手の悪意を懲しめてやつて下さいませ。あゝ妾《わたくし》が男でございましたら、……本当に男でございましたら……」
瑠璃子は、熱に浮かされたやうに、昂奮して叫び続けた。
「が、瑠璃子! 法律と云ふものは人間の行為の形|丈《だけ》を、律するものなのだ。荘田が、
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