。」
 瑠璃子は泣き顔を擡げながら、心配さうに訊いた。
 涙に洗はれた顔は、一種の光沢を帯びて、凄艶な美しさに輝いてゐるのであつた。

        五

「さあ! 其処なのだ! 今日警視総監が、個人として俺《わし》に会見を求めたのは、その問題なのだ。総監が云ふのには、この位なことで、貴方《あなた》を社会的に葬つてしまふことは、何とも遺憾なことなので告訴を取り下げるやうに懇々云つて見たが、頑として聴かない。そして唐沢氏本人がやつて来て、手を突いて謝まるならば告訴を取り下げようと云ふのだ。何うも先方では貴方《あなた》に対して何か意趣を含んで居るらしい。貴方も快くはあるまいが、此際先方に詫を入れて、内済にして貰つたら何うかと云ふのだ。貴方もあんな男に詫びるのは、不愉快だらうが、然し、貴方の社会的地位や名誉には換へられないから、此際思ひ切つて謝罪して見たら何うかと云つて呉れるのだ。先方が告訴を取り下げさへすれば、検事局では微罪として不起訴にしようと云つてゐると云ふのだ。」
 父は低くうめくやうに云つて来たが、茲まで来ると急に烈しい調子に変りながら、
「だが、瑠璃子考へておくれ。あんな男に、
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