と美しさとを、そのスラリとした全身に湛へながら、落着いた冷たい態度で、玄関に現れた。
勝平は、瑠璃子の姿を見ると、此間会つた時とは別人ででもあるやうに、頭を叮嚀に下げた。
「お嬢さまでございますか、先日は大変失礼を致しまして、申訳もございません。今日は、あのう! お父様はお在宅《いで》でございませうか。」
かうも白々しく、――あゝした非道なことをしながら、かうも白々しく出られるものかと、瑠璃子が呆れたほど、相手は何事もなかつたやうに、平和で叮嚀であつた。
瑠璃子は、一寸拍子抜けを感じながらも、冷たく引き緊めた顔を、少しも緩めなかつた。
「在宅《ゐま》すことは、在宅《ゐま》すが、お目にかゝれますかどうか一寸伺つて参ります。」
瑠璃子は、さう高飛車に云ひながら、二階の父の居間に取つて返した。
「やつて来たな。よし、下の応接室に通して置け。」
瑠璃子の顔を見ると、父は簡単にさう云つた。
応接室に案内する間も、勝平は叮嚀に而も馴々しげに、瑠璃子に話しかけようとした。が、彼女は冷たい切口上で、相手を傍へ寄せ付けもしなかつた。
「やあ!」挨拶とも付かず、懸声とも付かぬ声を立てながら、父
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