ざ/\五万を越す大金を消《つか》つて、園遊会をやつたことまでが、馬鹿らしくなつた。大臣や総裁や公爵などの挨拶を受けて、有頂天にまで行つた心持が、生若い男女のために地の底へまで引きずり込まれたのだ。
彼の憤《いきどほ》りと恨みとが、胸の中で煮えくり返つた時だつた。その憤りと恨みとの嵐の中に、徐々に鎌首を擡げて来た一念があつた。それは、云ふまでもなく、復讐の一念だつた。さうだ、俺の金力を、あれほどまで、侮辱した青年を、金の力で、骨までも思ひ知らしてやるのだ。青年に味方して、俺にあんな憎悪の眼を投げた少女を、金の力で髄までも、思ひ知らしてやるのだ。さう思ふと、彼の胸に、新しい力が起つた。
青年の父の杉野直と云ふ子爵も、少女の父の唐澤男爵も、共に聞えた貧乏華族である。黄金の戈の前に、黄金の剣の前には、何の力もない人達だつた。
が、何うして戦つたらいゝだらう。彼等の父を苛めることは何でもないことに違ひない。が、単なる学生である彼等を、苛める方法は容易に浮かんで、来なかつた。その時に、勝平の心に先刻の二人の様子が浮かんだ。睦じく語つてゐる恋人同士としての二人が浮かんだ。それと同時に、電《いな
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