うじん》するんだよ。」
さて一同《いちどう》で裏庭《にわ》に着《つ》いてみますと、そこでは今《いま》、大騒《おおさわ》ぎの真《ま》っ最中《さいちゅう》です。二《ふた》つの家族《かぞく》で、一《ひと》つの鰻《うなぎ》の頭《あたま》を奪《うば》いあっているのです。そして結局《けっきょく》、それは猫《ねこ》にさらわれてしまいました。
「みんな御覧《ごらん》、世間《せけん》はみんなこんな風《ふう》なんだよ。」
と、母親《ははおや》は言《い》って聞《き》かせました。自分《じぶん》でもその鰻《うなぎ》の頭《あたま》が欲《ほ》しかったと見《み》えて、嘴《くちばし》を磨《す》りつけながら、そして、
「さあみんな、脚《あし》に気《き》をつけて。それで、行儀《ぎょうぎ》正《ただ》しくやるんだよ。ほら、あっちに見《み》える年《とし》とった家鴨《あひる》さんに上手《じょうず》にお辞儀《じぎ》おし。あの方《かた》は誰《たれ》よりも生《うま》れがよくてスペイン種《しゅ》なのさ。だからいい暮《くら》しをしておいでなのだ。ほらね、あの方《かた》は脚《あし》に赤《あか》いきれを結《ゆわ》えつけておいでだろう。ありゃあ
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