だめ》! 何《なん》としても水《みず》に入《い》れさせる事《こと》が出来《でき》ないのさ。まあもっとよく見《み》せてさ、うん、うん、こりゃあ間違《まちが》いなし、七|面鳥《めんちょう》の卵《たまご》だよ。悪《わる》いことは言《い》わないから、そこに放《ほ》ったらかしときなさい。そいで早《はや》く他《ほか》の子達《こたち》に泳《およ》ぎでも教《おし》えた方《ほう》がいいよ。」
「でもまあも少《すこ》しの間《あいだ》ここで温《あたた》めていようと思《おも》いますよ。」
と、母親《ははおや》は言《い》いました。
「こんなにもう今《いま》まで長《なが》く温《あたた》めたんですから、も少《すこ》し我慢《がまん》するのは何《なん》でもありません。」
「そんなら御勝手《ごかって》に。」
そう言《い》い棄《す》てて年寄《としより》の家鴨《あひる》は行《い》ってしまいました。
とうとう、そのうち大《おお》きい卵《たまご》が割《わ》れてきました。そして、
「ピーピー。」
と鳴《な》きながら、雛鳥《ひな》が匐《は》い出《だ》してきました。それはばかに大《おお》きくて、ぶきりょうでした。母鳥《ははどり》は
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