《かしこ》いここの猫《ねこ》さんにでも、女御主人《おんなごしゅじん》にでも訊《き》いてごらんよ、水《みず》の中《なか》を泳《およ》いだり、頭《あたま》の上《うえ》を水《みず》が通《とお》るのがいい気持《きもち》だなんておっしゃるかどうか。」
牝鶏《めんどり》は躍気《やっき》になってそう言《い》うのでした。子家鴨《こあひる》は、
「あなたにゃ僕《ぼく》の気持《きもち》が分《わか》らないんだ。」
と、答えました。
「分《わか》らないだって? まあ、そんなばかげた事《こと》は考《かんが》えない方《ほう》がいいよ。お前《まえ》さんここに居《い》れば、温《あたた》かい部屋《へや》はあるし、私達《わたしたち》からはいろんな事《こと》がならえるというもの。私《わたし》はお前《まえ》さんのためを思《おも》ってそう言《い》って上《あ》げるんだがね。とにかく、まあ出来《でき》るだけ速《はや》く卵《たまご》を生《う》む事《こと》や、喉《のど》を鳴《なら》す事《こと》を覚《おぼ》える様《よう》におし。」
「いや、僕《ぼく》はもうどうしてもまた外《そと》の世界《せかい》に出《で》なくちゃいられない。」
「そん
前へ
次へ
全39ページ中25ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
菊池 寛 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング