になり、そうなると、子家鴨《こあひる》はもう水《みず》の上《うえ》を泳《およ》ぎたくて泳《およ》ぎたくて堪《たま》らない気持《きもち》が湧《わ》き出《だ》して来《き》て、とうとう牝鶏《めんどり》にうちあけてしまいました。すると、
「ばかな事《こと》をお言《い》いでないよ。」
と、牝鶏《めんどり》は一口《ひとくち》にけなしつけるのでした。
「お前《まえ》さん、ほかにする事《こと》がないもんだから、ばかげた空想《くうそう》ばっかしする様《よう》になるのさ。もし、喉《のど》を鳴《なら》したり、卵《たまご》を生《う》んだり出来《でき》れば、そんな考《かんが》えはすぐ通《とお》り過《す》ぎちまうんだがね。」
「でも水《みず》の上《うえ》を泳《およ》ぎ廻《まわ》るの、実際《じっさい》愉快《ゆかい》なんですよ。」
と、子家鴨《こあひる》は言《い》いかえしました。
「まあ水《みず》の中《なか》にくぐってごらんなさい、頭《あたま》の上《うえ》に水《みず》が当《あた》る気持《きもち》のよさったら!」
「気持《きもち》がいいだって! まあお前《まえ》さん気《き》でも違《ちが》ったのかい、誰《たれ》よりも賢
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