界《せかい》の半分《はんぶん》ずつだと思《おも》っているからなのです。ある日《ひ》牝鶏《めんどり》は子家鴨《こあひる》に向《むか》って、
「お前《まえ》さん、卵《たまご》が生《う》めるかね。」
と、尋《たず》ねました。
「いいえ。」
「それじゃ何《なん》にも口出《くちだ》しなんかする資格《しかく》はないねえ。」
 牝鶏《めんどり》はそう云《い》うのでした。今度《こんど》は猫《ねこ》の方《ほう》が、
「お前《まえ》さん、背中《せなか》を高《たか》くしたり、喉《のど》をごろつかせたり、火《ひ》の子《こ》を出《だ》したり出来《でき》るかい。」
と、訊《き》きます。
「いいえ。」
「それじゃ我々《われわれ》偉《えら》い方々《かたがた》が何《なに》かものを言《い》う時《とき》でも意見《いけん》を出《だ》しちゃいけないぜ。」
 こんな風《ふう》に言《い》われて子家鴨《こあひる》はひとりで滅入《めい》りながら部屋《へや》の隅《すみ》っこに小《ちい》さくなっていました。そのうち、温《あたたか》い日《ひ》の光《ひかり》や、そよ風《かぜ》が戸《と》の隙間《すきま》から毎日《まいにち》入《はい》る様《よう》
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