》て、子家鴨《こあひる》の力《ちから》では、凌《しの》いで行《い》けそうもない様子《ようす》になりました。やがて日暮《ひぐ》れ方《がた》彼《かれ》は見《み》すぼらしい小屋《こや》の前《まえ》に来《き》ましたが、それは今《いま》にも倒《たお》れそうで、ただ、どっち側《がわ》に倒《たお》れようかと迷《まよ》っているためにばかりまだ倒《たお》れずに立《た》っている様《よう》な家《いえ》でした。あらしはますますつのる一方《いっぽう》で、子家鴨《こあひる》にはもう一足《ひとあし》も行《い》けそうもなくなりました。そこで彼《かれ》は小屋《こや》の前《まえ》に坐《すわ》りましたが、見《み》ると、戸《と》の蝶番《ちょうつがい》が一《ひと》つなくなっていて、そのために戸《と》がきっちり閉《しま》っていません。下《した》の方《ほう》でちょうど子家鴨《こあひる》がやっと身《み》を滑《すべ》り込《こ》ませられるくらい透《す》いでいるので、子家鴨《こあひる》は静《しず》かにそこからしのび入り、その晩《ばん》はそこで暴風雨《あらし》を避《さ》ける事《こと》にしました。
この小屋《こや》には、一人《ひとり》の女《
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