うじゅう》から出《で》る青《あお》い煙《けむり》は、暗《くらい》い木《き》の上《うえ》を雲《くも》の様《よう》に立《た》ちのぼりました。そしてそれが水上《すいじょう》を渡《わた》って向《むこ》うへ消《き》えたと思《おも》うと、幾匹《いくひき》かの猟犬《りょうけん》が水草《みずくさ》の中に跳《と》び込《こ》んで来《き》て、草《くさ》を踏《ふ》み折《お》り踏《ふ》み折《お》り進《すす》んで行《い》きました。可哀《かわい》そうな子家鴨《こあひる》がどれだけびっくりしたか! 彼《かれ》が羽《はね》の下《した》に頭《あたま》を隠《かく》そうとした時《とき》、一|匹《ぴき》の大《おお》きな、怖《おそ》ろしい犬《いぬ》がすぐ傍《そば》を通《とお》りました。その顎《あご》を大《おお》きく開《ひら》き、舌《した》をだらりと出《だ》し、目《め》はきらきら光《ひか》らせているのです。そして鋭《するど》い歯《は》をむき出《だ》しながら子家鴨《こあひる》のそばに鼻《はな》を突《つ》っ込《こ》んでみた揚句《あげく》、それでも彼《かれ》には触《さわ》らずにどぶんと水《みず》の中《なか》に跳《と》び込《こ》んでしまい
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